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Atelier Onie
「 月 華 美 刃 」 シリーズ
序文 「そこにはなにもない」 

 ──月に兎はいない。
 夜空という黒い画用紙を穿つ1点の穴。
 蒼く、蒼くそこにある穴に見える黒い光を、古の人は「兎」だと言った。
 ──月に兎などいない。
 黒く見えるのは、血の跡だ。
 それを「月」と呼び、そこに「兎がいる」とされるより遙か昔。
 火倶夜の姫が、そこから降り立ち、そこに舞い戻るよりも遙かな昔。
 遙か、遙か昔から繰り返されてきた流血の舞。
 繰り返される度に、その大地には紅い血が流された。
 その紅が、乾き、ひび割れ、黒く固まった上から、紅を重ね、乾き、ひび割れ、黒く固まり、紅が重ねられ…遙かから望むその黒は、「まるで兎のように見える」までになった。
 
 「月華舞闘曲」
 
 それはこの世で、最も華やかにして、最も麗しい舞。
 それはこの世で、最も愚かにして、最も劣悪なる闘い。
 6つの大国の姫君が殺しあう舞踏曲。
 敗者は全てを失い、勝者に与えられるものも、また、なにもない。
 そう、なにもない。
 それはまるで、今、空に浮かぶあの月のように


短編小説 『 刃 』
作:コジ・F・93
(↑タイトルクリックで、作品が読めます)

〜 『 刃 』の概要 (一部を抜粋) 〜

 フェルミナ王国には、1人の若き剣士がいる。
 モスフォート王家の長女でありながら、己の実力でフェルミナ最強の証である「現代最強の剣士(ソードマスター)」の称号を受けた姫。その剣に斬れぬものは無く、その剣に刃を合わせることすら許さない、絶望的な強さを持つ、美しき剣姫アイラ。
 その冗談のような武を持つが故に、彼女の仕事は本来姫がこなさねばならないそれとは完全に一線を隔している。彼女は姫であって姫ではない。剣姫であり、現代最強の剣士。そして、最強の「悪魔殺し(エクスキューター)」なのだ。彼女の仕事は、テラスから国民に手を振ったり、煌びやかに着飾ってどこぞの王宮のパーティーに出席することではない。
 「王国の裏に跋扈する外道、魔道を一切の例外なく殲滅すること」それが彼女に与えられる仕事であり、彼女が望む仕事もまた、それであった。


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